親の人生を豊かにしてくれる子どもたち


人は周りの人から沢山のことを学びます。
中には人をまるっきり変える人もいます。
私について言えば、私を最も変えたのは、私の2人のこどもでした。

今回はその子供たちについて書いてみたいと思います。

私には26歳で、広島県立大学の聴講生をしている娘の世子(せいこ)と、
今年4月から京都で働き始めた22歳の息子の真一がいます。
娘の世子はとても明るく、いつもニコニコしています。
人々はこの娘を障害者と呼び、できない劣っている人と思っています。
しかし、私はいつも、なぜ人々は彼女のような人を、障害者というような、
できない劣っている人のように言うのか不思議に思っています。
障害者は何もできない劣っている人なのでしょうか?

いいえ、彼らはたくさんのことができます。
しかし、多くの人は、「その通り、彼らにもできることは沢山ある。
でも私たち健常者以上にできることはない。」と思っている人が多いと思います。
本当にそうでしょうか?
私は、全ての面で健常者のほうが優れていると言い切れないと思っています。

そのように思うようになった話を書きます。

一つ目のはなしです。

息子の真一が8歳の時でした。
クラスに車椅子の障害者を招いて、障害者教育がありました。
子供たちは車椅子の人を押して色々学校内を案内したり、
給食を食べさせてあげたりして、とても楽しく過ごしたそうです。
そして、授業の終わりに、先生が真一に
「あなたのお姉さんの世子さんも障害児よね」と言ったそうです。
びっくりした真一は、仕事から帰ってきた私に、
「お母さん、お姉ちゃんは障害者なんだって。お母さん、知ってた?」と言いました。
どのように説明していいか分からなかった私は、彼に、
「障害者の人ってどんな人のことだと思う?」と尋ねました。
彼は、しばらく黙っていました。
そして、「助けがいる人かな」と答えました。
「お姉ちゃんはどう?」ときいてみました。
すると、再び黙ってしばらく考えていました。
やがて、「おかあさん。助けがいるのは僕だよ。」と言いました。
「どういうこと?」と尋ねると、
「だって、僕の部屋はいつも汚くて、お母さんがいつも片付けてくれるけど、
 お姉ちゃんの部屋はいつもきちんとしているよ。
 僕は学校へ持っていくものをいつも忘れて、お母さんに注意されるけど、
 お姉ちゃんは1回も忘れ物をしたことがないよ。
 それから、・・まーとにかく、
 僕のほうが助けてもらうことがいっぱいあるんよ。」と言ったのです。

生まれた時から、障害をもっているお姉ちゃんとくらしてきた真一は、
毎日の生活の中では、お姉ちゃんは自分より余程助けの要らない、
優れていると信じていたのです。

2つ目のはなしです。

真一が10歳の時です。
日曜参観日があり、私たち親は授業参観をしました。
生徒たちはとても活発に、「はい。はい。」と言って、手をあげ、先生の質問に答えていました。
そのような生徒たちの中に、1人だけ、1回も手をあげなかった生徒がいました。
それが真一でした。
授業の最後に先生は、
「真ちゃん。1回も発言していないけど何か言ってみたら?」といいました。
すると「なんで僕が何か言わにゃあーいけんのん?」といったのです。
私はどうしたら良いか分からず、黙っていました。

家に帰って、
「真ちゃん、なんで先生にあんな意地悪なことを言ったの?」と聞いてみました。

「だって、ぼくには得意なことが何もないんよ。
 良いことなんか何もないんよ。言うことがないよ。」と言ったのです。

「真ちゃん。あんたには沢山良いところがあるよ」と私は言いました。

「お母さん、じゃあ、僕の良いところを言ってみてよ。
 お姉ちゃんにはいいところがいっぱいある。
 お母さん、僕にお姉ちゃんより良いところが1つでもあったら言ってみて」

何を言ったら良いか分からなかった私は、
「お姉ちゃんの良いところって何?」と聞いてみました。

すると、びっくりした顔をして、
「お母さん!お姉ちゃんはお父さんとお母さんをニコニコさせることができるよ。
 学校でも先生や生徒たちは、お姉ちゃんを見たら、
 ニコニコしてうれしそうだよ。
 僕には周りの人をニコニコさせることはできない。
 それから、僕には絶対できないことで、
 お姉ちゃんには簡単にできることがあるよ。
 この間、お父さんとお母さんが大きな声でけんかしていたでしょ?
 あの時ぼくは我慢できなかったから離れたんよ。
 お姉ちゃんはお母さんのそばにいて、お父さんに言ったんだ。
 「お父さん!お母さんのこと好き?」と。
 そしたら、お父さんは「大嫌いじゃ!」と言ったよ。
 そしたら、お姉ちゃんは
「お父さん!お母さんのこと好きになってあげて!」と言ってね、
 お父さんの手をもったんよ。
 それで、お父さんとお母さんの喧嘩は終わり。
 お姉ちゃんはお父さんとお母さんの喧嘩を簡単に止めさせられるんよ。
 僕にはできん。ねー!お母さん、僕の良いところを言ってみて!」

私は真一の良いところを思いつきませんでした。
仕方なく次のように言いました。

「真ちゃんは、字を読んだり、書いたりできるじゃ。計算もできるじゃ。」と。

真一は、私を軽蔑したような顔をして「そんなことじゃないじゃろ!」と。

真一はお姉ちゃんをすばらしいお姉ちゃんと思っていたのです。

こんな話は沢山あります。
私は彼ら2人から色々なことを学びました。
彼らは私の先生です。
彼らは幸せな生き方とは何か教えてくれました。
考え方が変わりました。

今、私は次のようなことが言えます。

人は、どんな人とも、比べてはいけない。
一人の人が他の人より優れていると言うこともできないと。
人はどんな人からも学ぶことが沢山あると。
障害をもった私の娘のようなひとからも
沢山のことを学ぶことができると。

みなさん、できるだけ沢山の人と会って、付き合ってみてください。
その中には沢山のあなたの先生が見つかります。




※上のスピーチは当会の会員である藤山節子さんが、
 トーストマスターという、英語のスピーチ大会の日本大会で
 1位になったスピーチです。
 日本語に訳していただきましたので楽しんでください。